この記事は『メイドインアビス』または、『劇場版メイドインアビス~深き魂の黎明~』のネタバレ、及び『小池一夫著:人を惹きつける技術』の内容を多大に含んでいます。気を付けて潜るように。
今回はコラム的記事となります。深き魂の黎明を、物語の構成やキャラから掘り下げていきます。この映画に対しての理解を深めたい方たちへ送ります。
みんな大好きボンドルド。嫌悪感と憧れの狭間で彷徨うけれども、ボンさんの魅力という引力には抗えないようで、「ははーん、さてはこいつ祈手だな?」と思わせる方々がSNS上に溢れています。
いや、あの、ちなみに僕は不動卿がいいんで。
そんなジルオジョークもはさみながらのコラムとなります。
探窟家の性質から考える
さて本題。
純粋な悪役といえば戦闘力53万のあのお方がぱっと思い浮かびますけども、ボンさんは果たして悪役なのか。このような事を考える方は少なくないはずです。
深き魂の黎明での相関図において悪『役』なのは、まぁそうじゃないかなと思います。主人公ご一行に危害加えちゃってるもんね。
ただ、一つ言えるのは、探窟家なんてのはどこかネジがぶっ飛んでるやつばかりだという事です。
自分とそう変わらない体格のロボットに町中の電力をぶっ放すR氏。なぜか真っ先にちんちんを覗き込むH氏。(プライバシー保護のため、イニシャルで表記しています。)
その中でもどっか行っちゃったネジの数が多いのがボンさんという事になります。多分そのネジは東急ハンズやホームセンターには売られていない物です。倫理観とか、そういう名前で呼ばれています。
要は程度の問題、だという事ですね。もしかしたら、探窟家における笛のランク制度はネジ飛ばし選手権と言い換える事が出来るかもしれません。
すなわち、白笛の中でも黎明の名を冠するボンさんってこれ、高田延彦さんに言わせれば探窟家の中の探窟家という事になります。
ボンドルドは「ライバル」
そしてここで参考にしたいのが、つくしあきひと先生が強くオススメしている『人を惹きつける技術』です。
この本の2章です。2章に答えが書いてありました。
というか、『人を惹きつける技術』2章には北斗の拳などが例示されていますが、深き魂の黎明におけるリコ、レグ、ボンドルドの関係も驚くほど当てはまります。
本書の言葉で言うならば
ボンドルドは悪役でなく、ライバルです。
自分がフシギダネを選べばヒトカゲを選ぶ狡猾なあいつ……今考えればあれもそういう事かもしれません。なんかスマートに描かれているけど、よく考えたら普通にセコい!(初代しかやった事がないのを隠す気もない。)
確かにボンさんのネジはどっかに飛んで行ってしまって、再生産はされません。他の人類どころかアビスにも人間扱いされていないヤバいやつです。
それは一般的には欠点です。でも、探窟家としての弱点にはなり得ず、むしろ探窟家として最強に仕立て上げている。
それは武装に表れています。自らの倫理観と子供の肉体を極限までそぎ落としていった結果、カートリッジが出来ています。
カートリッジはある意味メイドインアビス作中において最高傑作の武装と言えます。アビスの呪いというとっておきの舞台装置を無効化しているのですから。
レグとの対比
対比として、主人公の1人であるレグは人間味溢れるキャラに仕上がっています。涙も流す。他人に思いも馳せる。ネジがしっかり締められています。ロボットだけに。ロボットなのに。
好奇心と知識だけはいっちょ前で、スカウターを使うまでもなく純粋な戦闘力はほぼゼロの子供を守りぬく事が使命だという事も正反対ですね。
レグとボンさん、お互いに最高の攻撃力を誇るのが「光」だというのも対比になっています。スパラグモスに使用回数の制限があるかどうかわからないですが、火葬砲は多大なエネルギー消費とそれによる致命的な反動があり、若干不利になっています。
そう思うと、地上の人間たちが憧れる奈落の至宝が越えるべきは人間だった、というアツいお話とも思えます。
ボンドルドは物語上イドフロントの番人であり、この後はラストダイブなので、深き魂の黎明がメイドインアビスの一つの区切りになる事は間違いないです。
そういう意味ではラスボス的扱い(ドラクエ6のムドー的な立ち位置)となりますが、黎明卿の名の通りオースにもたらした功績も計り知れないボンさんですから、悪というよりは探窟家として新進気鋭の後輩を迎え撃つライバルであると考えます。
おわりに
主人公には「オーラ」を、ライバルには「カリスマ性」を
引用:小池一夫『人を惹きつける技術』
オーラとカリスマ性は本書が唱える本来の定義では相対する物であり、まさにレグとボンさんにぴったりです。
更に、レグも含めたリコさん隊3人が醸し出すオーラが混ざり合い、不思議な色となって我々読者を惹きつけて離さない。
そんな弱点のある3人が最強に挑む。アツいですよね(黎明ボイス)。
ちなみになんですが、僕はオーラもカリスマ性も持ち合わせていない凡庸な男です。
『深き魂の黎明』を見た後は、『人を惹きつける技術』を読みましょう。
考えておくそす。僕、31年生きてきたんですけど、これ系統のセリフで初めて本当に可能性がありそうな物を見ました。飲みに誘っ…